ラファエル・ローゼンタールのレンチキュラー作品は、ウエブサイトの抽象化からイメージがつくられています。 支持体となるレンチキュラーはそもそも工業用素材であり、またその仕組がディスプレイに近く、モニターやプロジェクターに近い表面構造をもつ素材でもあります。多くのメディアを用いる彼の作品の中でも、レンチキュラーの作品シリーズは特に、特有の色彩や明暗のコントラスト、様々なパターン、動きとインタラクションがその基盤面へと定着した、絵画的作品と言えます。
デジタル表現と物理的な表現の中間にあるような素材の特徴を生かした作品は、技術と視覚芸術が密接に関わってきた文化的歴史とも関わっていることを示唆しています。 ネットアートの先駆者であるローゼンダールは、インターネットの黎明期からそれを表現手段のひとつとして用い、常に未来的で不確定、デジタルでありながらユーモアと余白がある表現の作品を制作してきました。それは、美術の歴史の変遷にも関わる仕事といえるでしょう。
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Rafael Rosendaal ラファエル・ローゼンダール website
1980年オランダ生まれ/ N.Y.在住。
2000年からウェブ作品を発表する、インターネット・アートの先駆的で代表的な存在。
ウェブ作品と平行して、デジタルで描いたイメージをタペストリーやレンチキュラーといった素材を用いて物質にする作品も制作。2023年よりペインティング作品の制作をスタートさせた。
思惑を排除し身体の自動的な動きに委ねられたドローイングを日々描き、そのドローイングをデジタルへ変換、そしてデジタルイメージから身体性を取込む物理的な作品へ展開、というようにデジタルとフィジカルの双方の領域に軽やかにアダプトし、相互による作用と可能性をアート作品を通じて提起する。
ヴェネツィア・ビエンナーレ(2011年)をはじめとする世界的な国際展への出品、ニューヨーク、タイムズ・スクエアの電光掲示板を使ったインスタレーション(2015年)で注目を集める。
近年の主な展覧会にホイットニー美術館(ニューヨーク)、ポンピドゥ・センター(パリ)、ドルトレヒト美術館(ドルトレヒト)、クンストハル美術館(ロッテルダム)、ステデリック・ミュージアム(アムステルダム)、アーマンド・ハマー美術館(ロサンゼルス)など。
日本との関わりも深く、2009年にAITレジデンシープログラム参加を皮切りに、カルバン・クラインとのコラボレーションイベント(2012年)、「セカイがハンテンし、テイク」(川崎市市民ミュージアム、2013年)、茨城県北芸術祭(2016年)、個展「GENEROSITY 寛容さの美学」(十和田市現代美術館、2018年)、「モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン」(ポーラ美術館、2023-24年)など展示多数。
(faro WORKPLACE筆)