一つの箱の中にもう一つの箱が入っている。その箱を開けると、その中につぎつぎ新たな箱が現れ最後は無となる。「束の間の間」現実と呼ばれるものは、時間と空間、そしてこの肉体が精神的プロセスを経て幾層にも投影された一揃えの「箱」である。
この東京に暮らす彼女たちの手と言葉は、まったく遠くに在るようでいて、我々の思考の箱を介してあなたのすぐ傍らにもやってくる。そして、その言葉が段々と絵の一部になるとき、ひとつの要素、形、色もまた同じように、互いが異なる層で働きながらも、奥行きを持ったあなただけの世界として結晶するのだ。
薄久保香
東京の街を舞台に2年に1回開催される「東京ビエンナーレ」。 そのプロジェクトで今年、薄久保香は大丸有(大手町・丸の内・有楽町)で働く数名の女性を取材し、彼女たちの内省的世界を描いた作品の壁画が制作されました。それぞれの話を汲み取ることからスタートした作品は、薄久保と彼女たちの共同制作ともいえます。個人の物語が、制作の過程を経ることで普遍性をもち、さらに鑑賞者個人の視座へと循環することで、様々なイメージの読み方が導かれ、新たな記憶の一片となっていきます。
「パーソナルな視点から、大きな世界を描き出したい」という薄久保のスタンスが貫かれた、複数の異なる現実が同居する緻密で美しい作品。 壁画の原画と、未公開作を展示致します。
関連展示
◯東京ビエンナーレ 壁画展示 「すぐ傍にみつけたあなたの分身」 9月23日(土)-11月5日(土)
国際ビル / 終日公開
三菱商事ビル / 平日 8:00–23:00|土 –22:00 日祝 10:00–22:00
◯渋谷西武 A館1階ショーウィンドウ 「束の間の間」 10月31日(火)-11月13日(月)