この度、faro WORKPLACEでは、アンドレアス・グライナーと保良雄による二人展を、中目黒・神楽坂の両会場にて同時開催いたします。
世界的な環境危機が目前の課題として突きつけられるなか、近年では山火事や水害などの自然災害が多発し、私たちの生活にも直接的な影響を及ぼすようになりました。このような状況下で、アンドレアス・グライナーと保良雄は、自然と文化の関わりやその歴史に強い関心を寄せ、作品を通じて問いを投げかけます。
ドイツと日本、それぞれ異なる文化的背景を持つ二人の作家と対話を重ねる中で、私たちは「Kulturfrau(クルトゥールフラウ)」という言葉に出会いました。これは、第二次世界大戦後のドイツで植樹活動を行った女性たちを指し、その姿はドイツのコインにも刻まれています。ドイツ語で「Kultur」は「文化・教養」を意味すると同時に、「耕作・開墾・栽培」といった意味も含みます。「Frau(フラウ)」は「女性」を指すとともに、人名の後につけて「~さん」という敬称として使われる言葉です。 制作の過程において、グライナーは森へと分け入り、保良はヒマラヤの山々を登るなど、それぞれ異なるアプローチで自然と向き合ってきました。一本の樹を植えることから始まり、それがやがて大きな森へと成長していく——二人のアーティストの姿勢は、一滴のしずくのようにささやかでありながらも力強く、戦後の混迷期に自然と向き合った「Kulturfrau」の行動に重なるようです。
両会場では、自然と文化の関係性について深いリサーチをもとに制作された、インスタレーション、映像、オブジェなど、多様な表現方法による作品を展示いたします。これらの作品を通じ、二人の共通点と相違点が浮かび上がることで、アートが問題に対して多角的な視点をもたらす意義がより深まり、それが私たち一人ひとりの行動へとつながる「種」となることを願います。